「キャリアの一貫性」をあとから作るには

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これまでに転職の相談を受けることは多く、それはいまでもぽつぽつとあります。転職では「キャリアの一貫性」が重視されるといい、転職するひともその点を必要以上に気にすることが多いので、そのあたりのメモです。

転職では「ある特定の仕事にどれだけの期間就いたか」が重視されるといいます。たしかに、日本企業、外資問わず、募集要項のいちばん目立つ部分に、きわめて簡潔に書いてあります。「〇〇歴が〇年から〇年のひと求む」と。つまり、その要件を満たさないと、採用どころか応募すらままならないよ、というわけです。

これが、よくいわれる「転職ではキャリアの一貫性が大切」という根拠です。その会社で30歳くらいが多い職位では5年以上の経験が求められ、35歳では10年以上、40歳では15年以上となることが多いことも「キャリアの一貫性が大切」という確信につながります。

さて、いきなりひっくり返しますが、この募集要項は信じてよいものなのでしょうか。

求人の権限をもつのは人事ではなく部門長などで、人事に採用枠の確保とたいていは前任者の給与より少し下の給与レンジを示して「採用活動の指示」をします。スクリーニングのための募集要項をつくり、転職エージェントや各種媒体にばらまくわけですが、正直、細かな部分などみないでテキトーに出稿しています。

外資企業などでは英文と日本語とで整合性をもたせる必要がありますから、少し変えるだけでも案外と面倒なのです。よって、ほとんどが「過去に問題がなかった募集要項」を丸コピします。自分が書いた文章ではないので「職歴の年数? なにそれ?」なのです。

「え、じゃあ経験年数ってなんの意味があるの?」。なんの意味があるのかは、採用する側もよくわかっていません。ただ、募集要項に「年齢や性別を書く」ことは厳しく制限されているため、「これ、年齢の代わりだよね? 大卒で10年から15年の経験が必要って書けば、うーん、つまりマネージャにもなれる35歳くらいのひとがほしいってことだよね?」ととらえるのがよさそうです。

というわけで、経験年数は「未経験でなければ」ひとまず無視でよいでしょう。エージェントなどは経験を年数ではなくゼロかイチかで判断して、手持ちのクライアントをがんがんぶっこんできます。

あとは、職歴の年数が足りなくても「オレの1年はほかのひとの5年分じゃ!」と信じていれば、内容をシンプルに書いたり伝えたりすればよいだけです。「いえ、ワタシの1年はやっぱり1年なんです」であれば、いくつかのキャリアの共通点をみつけて、ストーリー仕立てで書くことになります。

次々と職を変えていても、それぞれに没頭して結果を出していれば「新たな分野に目標値をもって挑戦することが好きで、それまでの経験もあわせることで短期間で成果をあげてきた」という「キャリアの一貫性」が生まれます。相手は「おっ、これから増えていく新規事業立ち上げで先頭に立ってくれて、言い訳することなく、1年以内で結果を出すことにフォーカスしてくれるだろう」と考えます。

つまりは「スクリーニングや年齢を暗に示すための条件など気にしないで、やりたい仕事をみつけたら応募するのがいいよ。そもそもインタビューは年数とかじゃなくてプレゼン能力発揮の場だし……」がアドバイスになります*1

次は、転職ではありませんが、こんな書き方もあるという例です。というか、ほんとはこれだけ書きたかったのですが。

「30年前にソ連のキャンプに参加したことがあるがあまりおぼえていない。昨年、羽生選手の応援でモスクワにツアーで行った。今年、夫婦で極東ロシアを旅してお店などで現地のひとと写真を撮った。ちなみに、父親は大学時代にロシア文学をかじっていた」といった設定の妻を例にします。

これに、少し情報をくわえて盛ってみると「ロシア文学を研究する父のもとに生まれ、幼い頃からロシアに親しむ。30年前のソ連時代にも同国に1か月滞在するなど現地の「生」事情に詳しく、近年も各都市を毎年のようにまわり、現地のひととの交流を続けている」となります。

そう、いまからでも何かひとつ足すだけで、いろいろがつながるのです。真面目に職歴だけを追うことなく、幼い頃、親、遊びもぐちゃっと混ぜてもよいのです。「キャリアの一貫性」はあとからでも作れるのです。

*1:応募する方にとっては大変失礼な話ですが、履歴書もインタビューの直前や途中で初めてみるひとがほとんどです。とにかく採用をしなければならないので、履歴書を送ってきたひとのほとんどとインタビューします。要件を満たしているダメ人間もいれば、要件からはずれていても採用したいひとがいるので、採用側が贅沢言うことはあまりありません。「どんな要件で求人していたかを知らず、履歴書も読んでいない」相手とのコミュニケーションの場なのです。