お兄さんの「浅草で焼き鳥屋さんをやりたい」を阻むもの

f:id:tak_jp:20180605073924j:plain 妻は、地元の整体と銀座の美容院に通っています。銀座の美容院も、もともとは自宅の近くに通っていたのが、オーナーの気まぐれで店を閉めることになり、美容師さんが銀座に移ったものです。高級エステに行かず、都心タワマンやカイエンを欲しがることのない「省エネ妻」です。

整体師さんも、美容師さんも20代のお兄さんだそうです。一歩間違えばホスト狂いになりそうな気がしますが、まあ、そうなったらそうなったです。お酒が飲めないので大丈夫だと思いますが。

そんな整体のお兄さん、「お金貯めて、浅草でのんびり焼き鳥屋をやりたいな」だそうです。

私だと「浅草で飲食。坪2万で、焼き鳥だと10坪かなぁ。うーん、焼き鳥は重飲食OKを探すってだけで厳しくなるんだけど、家賃だけで月20万円はキツイから立地外して15万円以下で探さないとね。まあ、オレに任せてよ。お金は貯めなくていいよ。すぐやろう。保証金は公庫でどうにかなるから、いいひと紹介するよ。あと、いまは炎上的に男の生涯をかけたとか魂を込めたとか使っちゃダメ……え、いますぐって気分じゃない? それなら、旧耐震でいいから浅草だけど所有権のボロビル買ってまわして、店出したくなったら1階に出店してみない? 上に住めればいま払ってる家賃も浮くよ。ところで正社員? あと年収教えて?」でしょうか。

焼き鳥屋さんやりたい夢を口にしただけなのに、なぜか公庫とか、ボロビルのオーナーになるべきって話をきかされるはめになります。共感性ゼロです。ゴミですね。人間としてどうなんだろうって思いますね、不動産屋って。

妻は妻で「さすがー!」「しらなかったー!」「すごーい!」「センスあるー!」とか絶対に言いません。「えー、小さい夢だね」と思ったけど、ギリで口に出さず「そうなんだー!」だけで帰ってきたそうです。ふぅ。

「夢に大きいも小さいもないでしょ。浅草だったら外国人も多くくるだろうし、その縁でシリコンバレーにお店を出すことになるかもしれないじゃない。日本人のエンジニアはいまよりももっとグーグルとかアレとかで活躍するようになるんだし、日本人の焼き鳥屋が世界を変えるエンジニアのコミュニケーションを支えるんだよ。これって、ほんとすごいことなんだけど、焼き鳥を食べられない宗教ってないんだよ*1彼の焼き鳥屋が世界を変えるんだよ!

「えーと、焼き鳥屋さんが浅草からシリコンバレーに行くあたりからよくわかんなかった」。「ですよねー」。

ただ、真面目な話、女の子の「お花屋さんになりたい!」と、お兄さんの「焼き鳥屋さんやりたい!」は根っこは同じです。

ビジネスとして考えた場合「賃料を払いながらの成功の可能性はどちらもゼロ」です。ビジネスとして成功するのは、「お花屋さんになりたい! だからオトナになったらワタシ、いい歳こいて嫁のこない地主探して結婚するの!」「焼き鳥屋さんやりたい! だから学習塾とかややこしいテナントが入って叩き売られてるボロビル買って、1階が退去するの待ってから煙で燻し出して丸ごと重飲食OKにするんだ!」が正しい道になります。

こんな夢のもてない国をつくったのはだれだ、みたいな話になりそうですが、何事も現実と向き合える若者が賢く、私たち年寄りはアホってだけなのかもしれません。

焼き鳥屋さんにこだわるなら、安いけど一等地にあるようなお店は「戦後のどさくさにまぎれて場所とって居座り続けて、奪い取った既得権を武器に安い値付けにして、夢ある若者が新規出店できなくさせている老害店だったりもするんですね。浅草寺の地代問題もこの類です。

うーん、多様な情報が簡単に手に入る時代にサラリーマンがマンション投資に手出して大火傷負うのはいいとして、「若者がお店を出して失敗する」のはその確率があまりに高いのでどうにかならんかなと思います。失敗は事前のリサーチ不足で自己責任的に扱われてしまいますが、きっちりモデリングしたら「やるべきではない。夢はもつべきでない」しか出てこない現状が正しいわけないよねと、ちょっとまじめになってしまいます。

*1:ご存知のように、あります。それでも、私の友人のように「日本は圏外だからOK」理論でなんでも食べるひともいますが。