自宅を売るとき、家具を置くか取り去るか

中古の住宅を売却するときに、「高く、早く」売るために家具やインテリアなどで新築のモデルルームのように演出するサービスが増えてきています。

私は、中古を売る際にこういったお金、コストをかけてしまうのは「もったいない」と思っています。いつもより丁寧な掃除はするのがよいですが、ほかは壊れた建具があれば直すくらいで十分でしょう。

サービスは、売主の「もっと多くの金が欲しい、もっと早く金が欲しい」という欲望にストレートに訴えるものです。100万円高く、1か月早く売れる可能性が高いなら少々の出費はOKだということです。

中古住宅を、新築のモデルルームのように演出することで、高く、早く売れることはこのサービスの有無による価格や販売期間の差で「証明」されています。ただし、業者独自のデータによってですので、まずは疑ってかかるべき類のデータです。

まず、実感としてモデルルーム化した中古住宅が、高く、早く売れているとは感じません。むしろ、「相場より高く売るためにモデルルームのように演出した」中古住宅は、みんなが演出に金をかける米国などと違って、そのコストのぶんだけ他の競合物件から価格的に浮きます

モデルルーム化した部屋をみた後に、同じマンションの、すっぴんだけど安い部屋が買われていきます。結果、その部屋だけが売れ残り、何度も値下げする光景を目にすることになります。

そのロジックは簡単です。同じマンションの住民が、モデルルーム化によって相場からみて強気な価格で売り出していたら、似たような部屋のほかの住民が「じゃあ、少し安く出せば売れるかも」と当然に考え、売り出すからです。相場がわかりやすいほど、ひとは決断をできます。

同じ部屋のタイプの、より高層階などの条件がよい部屋であれば、より高い価格でも売れるかもしれません。モデルルーム化したひとは、他人の売却活動を支援するためにお金を出したようなものです。

いやでも、実際に高く、早く売れてるよというデータは?

数年前に野村不動産アーバンネットもデータを出していました。業者負担で演出した部屋と、なにもしなかった部屋との間における有意差を示すデータです。ただ、これもよくみると、「周辺相場よりも高く早く売れそうな部屋に、さらに演出をしてみた」だけの話でした。

コストも売り主には請求せず、「両手」前提のしばりをいれることで手数料から回収する仕組みです。つまりは、「売れそうな部屋」だけの集団と、「玉石混交」である地域平均の集団との比較にすぎませんでした。

新築マンションであれば、モデルルーム一部屋で数10戸から数100戸を売るわけですから、売り上げに対する家具やインテリアのコストは低くなります。

しかし、たった1戸を売るためにモデルルーム化すること、新築であれば完成物件ですべての部屋をモデルルーム化することは、どれだけ大手でも「コスト払うのがばかばかしい。客もバカじゃない。その分のコストが上乗せされていると気づく」と手をつけないでしょう。

モデルルーム化サービスが有効な場面もあります。業者がリノベした中古マンションであれば、内装もある程度標準化されていて家具も種類が不要ですから、安く導入できるでしょう。

同時に数10戸を販売しているので、家具おいて写真撮ってビデオ撮ったら、てこ入れしたい別のオープンルームに運んで使いまわすのもアリです。何より、新築っぽさが売りなのですから、新築っぽい演出には違和感がありません。

しかし、私たち個人が自宅を売るときは、自分の欲から、買い手から相場を超えるお金をもらおうとは考えないほうがよさそうです。きちんと掃除をすることにつきます。加えて、ふだんの生活の状態で写真やビデオをとったりしておくだけでも十分です。