45歳くらいで起業したひとのブログが参考にならなかった理由

ここ1週間ほど、いまの自分と同じ45歳くらいで脱サラして起業された方のブログなどを読みあさりました。不動産屋さんにかかわらず、どのブログにも違和感をおぼえました。ちょい具体的には、起業に向けての温度差が自分とずいぶんとあるようなのが気になっており、つい昨日、それは 就職氷河期に新卒だった自分と、3年から5年前以上に自分と同じくらいの齢だったいわゆるバブル世代との違い にあるんではと思うようになりました。

それは社会的背景がー、とか小難しいものではなく、シンプルに「20年以上勤めた会社の早期退職制度や希望退職で十分すぎるお金と時間を手に入れたんだけど、さてこれからどうしたもんかと考えたら起業だった45歳くらいのひと」ばかりがブログを書き始めていたのではないかと。

しっかりとした退職金制度のうえに満額どころか割増のうえに課税の控除額も半端ない退職金、会社都合退職ゆえにすぐに支払われてかつ20年以上勤務ゆえに1年くらい(330日)もらえてかつ非課税の失業保険、決して首なんかではなくクソみたいな会社を自ら見限って夢を追うことを選んだオレってすごい という自尊心。

全能感に満ちていない方がおかしいわけです。だからか、ときおり苦労話をまじえつつも、文章のはしばしから 妙なゆとりがダダ漏れ しているように感じてしまうんです。

一方、氷河期世代はどうなのかと。私とかね。そもそも厳選採用の名のもとで社内における人数分布も極端に少ない層で、早期退職制度の対象になんて含めてもらえません。そもそも早期退職制度で割増金もらえるような立派な会社に就職できたひとはわずかです。そもそも退職金制度が揺らいでいる時期でそんなもの存在しない場合だって多々あります。そもそも新卒時に超苦労して就職したので、いくらクソでも会社に正社員として属することに計り知れないメリットがあることを、正しい知識としてもっています。

私などの場合は、会社は4社目で勤続年数がさほどではないから退職金制度があってももらえる退職金の額はたかが知れています。もちろん自己都合退職であれば、さほども出ない退職金はさらに25%減額されるでしょう。当然ながら、自己都合退職ゆえ失業保険はすぐにもらえず、何か月も定期収入ゼロで放置されます。さらに、収入ゼロで放置された挙句、失業保険がもらえる期間も早期退職制度組の半分以下(150日)です。おまけに、失業保険は給与の退職前6か月間平均の50%から80%なんて言われますが、とっくに上限を振り切ってるから20%とかそのくらいしかもらえません。

ここら辺の「自己都合と会社都合で何がどれだけ違う? 退職金と失業保険の話」は参考になるサイトが皆無だったので、どこかでまとめるつもりです。モデリングもしたくてうずうずしてます。

で、まだ続けると、私は無名外資ITで今どきなビジネス部門のマネージャーをやってますから、仕事は充実しているやら、ステップアップあるいはとても興味深い転職のお誘いもエージェントや人事担当者自らからひっきりなしに届くやらで、起業して経営するといういばらの道に進まなければならない理由がありません。ハロワに何か月も顔を出して失業保険をのらりくらりともらい続けたり、さっと再就職手当だけもらって法人登記するのも、至難の業のように思います。

あれ、なんか愚痴っぽいぞ。でもね、ほんと「会社に勤めながら有給使いたおして起業の準備をして、アマゾンとかグーグルとかガートナーとかセールスフォースからの転職誘惑 をお断りしつつ、退職金も失業保険もあてにできないから事業計画書を練りに練って融資の取り付けに奔走して、ちまっとした店舗を探して契約して、どこと前後するか分からないけど法人も登記して、開業のできるだけ直前に退職して休みゼロで事業を本格的に始める」ことになるんです。

45歳くらいで起業したひとのブログの必須コンテンツになっている、自分探しの旅に出て、道中でブログに「なんかいい感じのこと」書いたりする 余裕なんてありませんわ。目の前に2000万円、3000万円の大金が積まれ、開業コンサルやら店舗インテリアデザイナーやらにちやほやされ、さらに1年近く働かずして十分な収入をもらえる身分じゃないんです。メンタルでも相当きっつい日々を送ることになるんです。これ、愚痴かなー。相反してるようで、実は心から楽しみなんですが。

「この道で10年、20年と続けていく」と覚悟するのは簡単です。あたり前。しかし、目論見どおりどころか最悪の想定にすら届かないくらいに事業がうまくいかず、1年後になって会社たたみたいと思ったとき、自分は元の業界の仕事に同じくらいの給与水準で戻れるのか、戻るためには起業前から何を準備しておけばいいかといった保険を考えたくなるのがふつうの感覚です。努力なんて報われないけど続けるしかない、分かっていても耐え切れないほどの理不尽にあふれた世の中 に私たちは生きてます。資本主義経済、資本主義社会ですから、いつ何が起こるか分からないことこそが本質です。

経営をしたくて起業するのに必要なのは、覚悟やら決意やら情熱やらをブログにしたためて自分に酔うんじゃなく、迷惑や損失を最小限にして撤退するための事業の出口戦略を粛々と策定することと、業界に出戻りできる保険をかけるためにできるだけのことをやっておくことでしょう。

それがサラリーマンだった経営者の思考の基本だと信じますし、私がほんとに知りたかったことはそんなことだったんだろうなと思います。20年以上サラリーマンそれなりにやってきたら「リスクを恐れずに」とか「これからの夢と幸せのバランスを考えると」とか 軽々しく言えない です。組織内で評価され続けることで給与もらってきたサラリーマンの洗脳っぷりなめんなよと。