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バルミューダのビジネスモデルを考える その2

バルミューダは、当初は「Macbookのそばにおいてください」テイストのインテリアを、感度高めのアップルユーザに、お値段も高めで販路しぼって売ってるブランドでしたが、家電への進出で大きく変わりました。

しかも最初のGreenFan(扇風機)から、いきなり見たこともない独特なファン形状を打ち出し、寺尾社長はめいっぱいの「開発ストーリー」をあちこちのメディアで語りまくりで、瞬く間にハイブランドの仲間入りをしてきました。最速でアップル、ダイソン、iRobotヤマギワの世界に入ってきました。

扇風機のあとは、AirEngine(空気清浄機)、Rain(加湿器)、GreenFan Cirq(サーキュレータ)と、単機能「ファン中心」家電をポンポンとリリースしてきます。イノベーションなどポンポン生まれるものではないので、投資回収も兼ねてファン技術に頼るのが経営安定化には必要だったからなのか、ともかく「ファン技術で攻めてくるバルミューダ」ブランドは一部で定着しました。

あわせて、AirEngineやRainは「消耗品でも稼ぐちゃりんちゃりんビジネス」を目指しているように思えました。扇風機は売ったら「はい終了」ですが、空気清浄機や加湿器は消耗品で稼げます。もっとも、プリンターや髭剃りなどと違って、バルミューダの家電は本体で十分に稼げてますなあ。ただ、たいして収益に貢献していないのか、結局、花粉の季節や冬に需要が集中するだけで、年間をとおしての売り上げ安定化にはつながらないからか、消耗品ビジネスはこのふたつで終わってます。

さらに、RainやSmartHeaterに対応するUniAuto(iPhoneなどからバルミューダ家電をいじれるプラットフォーム)は「つながることでさらなる価値を生み出し、できれば課金する」流れをつくるのかと思ったのですが、どうも違う? まさにIoTの先取りで、今ごろは、地域ごとの天気や気温を取得して、家電が自律的に動作するようになってるはずが、リビング家電への興味がなくなったようで絶賛放置中です。

私たちには、UniAutoを通じて提供したい未来があります。それは、家電から操作をなくすこと。インターネットにつながれば、その製品が置いてある場所の気温や湿度、風向きがわかります。天気予報も取得できるでしょう。これらの情報を利用して、必要な時に必要な分だけ、自動で動いてくれる家電が欲しいと思いました。人生には、家電の操作よりも、もっと重要な事が、たくさんあります。こんな思いを込めて、UniAutoという名前をつけました。UniAutoはまだ始まったばかりのテクノロジーです。 対応する製品も、できる事も、これからどんどん増えていく予定です。

未来、自分もまだ楽しみにしてます。対応する製品は1台も増えず、できる事もなにひとつ増えてませんが、もう2年待っているので、まだまだ待てます。

そして、リビング家電への進出に続く突然変異が、キッチン家電への進出です。UniAuto放置の元凶でもあります。トースターに続いて、ポット、炊飯器、そしてコーヒーメーカー、オーブンレンジと順当にキッチン家電を増やしていくわけですが、あとは鍋やホットサンドメーカーを手掛けてくれると嬉しいです(鍋とホットサンドメーカーは自分がほしいだけ)。

さて、

バルミューダの「これまで」には、週末起業に向けてとても気づきがあります。

インテリア中心の創業時は、次の点に注力していたことがうかがえます。

  1. 在庫をもたないビジネスに徹すること
  2. 対象をしぼりにしぼって、独自の強みで価格競争に巻き込まれないこと
  3. 専門誌など一定の権威をもつメディアに紹介されやすい製品を出すこと

しかし、資本主義では必然である景気の荒波に飲み込まれ、注文がなければ在庫ゼロとか関係なく会社はつぶれる経験をし、「本当にやりたいこと」のためにすべてをなげうつ行動に出ます。「本当にやりたいこと」……次の点があってこそ実現できそうです。

  1. 営業力 - 数を増やし泥沼化するのではなく、次々と別の方法を考え行動にうつす力と体力
  2. 意思 - 別のことやったほうが「金になる」など顧みず、たったひとつの目標に命かけてやりぬく
  3. 製品企画 - 「いける!」の直感をすべてロジックと数字におとし、つじつまがあわなくなっても前提を覆してでも「いける!」を持続させる

リビング家電の展開を自分は気にいってます。こんな感じでしょうか。

  1. ひとは体験、ストーリーを大切にすることを第一にする
  2. 何か技術が評価されたら、しばらくはそれだけで食っていくぞと腹くくって体力をつけることに専念する
  3. そのジャンルの過去と比較はするが、他社と比較はしないことで敵をつくらない。パクられても真っ向批判をしないのはもちろん、自らの小ささをわきまえた肯定さえする余裕をみせ炎上を避ける

さらにリビング家電では、消耗品やプラットフォーム(UniAuto)で収益を得るビジネスへの期待や模索もあったと思うのですが、消化しきれなかったようにみえます。また「失敗もあった」としているので、どれかは失敗作だと思っているようです。

ちなみに、バルミューダのリビング家電のデザインには、どれも同社の過去のインテリアとの連続性がみられるんです。RainはColonyですし、SmartHeaterのアルミラジエーターはX-Baseの流れにあると思います。これをデザイン哲学というのかはわからんですが、のちの大ヒット商品の習作を発見するのもまた楽しいものです。

バルミューダのリビング家電はWebの記事やブログで紹介されることが多くなり、通販カタログにものったりで自分はよく目にしましたが、まあ、一般的なブランド知名度はほぼゼロのままだったんじゃないかな。父や母の世代はもちろん、会社の同僚も「バルミューダ? 知らんがな」といった状況ですなぁ。

しかし、バルミューダはリビング家電の展開の仕方を変えませんでした。「革新」や「再定義」といった強いメッセージで製品を発表し、メディアにとりあげてもらう、ブログのアフィリエイトの定番に、といった流れです。社長自身の「代わり」のだれかに営業活動をしてもらうイメージでしょうか。

そんなコミュニケーションが大きく変わったのがキッチン家電であるThe Toaster。Webメディアでの「ちまちま」した営業活動は、ほとんどしなくなりました。

  1. トーストしたパンは「ソーシャル映え」したので、 InstagramTwitterなどの写真投稿ですさまじい勢いで勝手に拡散された
  2. 糸井重里との対談など、これまでの無名Webメディア記者取材と一線を画す「インフルエンサー」重視のメディア露出
  3. The Toasterを使う仲間が増え続けているんだよー、といった流れのコンテンツ展開に力を入れる

日本人だけが食べ物の写真をとってSNSに載せたがることは、グローバル化した世界で目立つようになった5本の指に入る謎だと思いますが、これをうまーく使ってると思います。そりゃ、コンビニの食パンにチーズのっけて焼くだけで「写真とってよー。 いいね!いつもの3倍は間違いなしだよ!」ってお料理が出てくるんですから、半日かけた自慢の凝り凝りなお料理よりぜんぜん受けるんですから、もう、営業活動の類などせずシェア一本ですわ。

どれも計算づくでやってきたことではなく、手あたり次第、金かけずにできることは何かと知恵しぼって工夫してたら、いまのバルミューダのやり方になったのでしょう。UniAutoなどの「風呂敷は広げるだけ広げてたたまない」のも、スタートアップには必要な態度でしょう。

さて、自分もいまできることはなにか考えつつ動き、知恵しぼって工夫してみます。