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「金利」と「富士山」 - 居住用マンション価格の歪み

自分はこれまでに3戸、居住用に買ったマンションを売ってます。売却金額と購入金額の差額の合計は5000万円です。おかげで、安愚楽牧場やFXのループイフダンで少々吹っ飛ばしても生き延びられてます。

ひとつ目は、湾岸勝どきのTHE TOKYO TOWERS。新築を5000万円で買って2年以上住んで7000万円で売りました。金額や住んだ期間は、レインズで真剣に成約探して謄本とられたりすると気分よくないのでぼやかしてますが。

ふたつ目は、目黒駅界隈のとあるマンション。目黒区は港区や中央区と違って容積率の緩和に厳しく(都内で一番厳しいんじゃなかろうか)、特徴書くとレインズ云々なのでやっぱりぼやかします。新築を4000万円で買って3か月以上放置して5000万円で売りました。

みっつ目は、やはり目黒駅界隈のとある築古マンション。アンドとると特定簡単なのでやっぱり特徴かけない。こんなんでブログに書く意味あるのかと不安になってきますが、リノベ済を5000万円で買って4年以上住んで7000万円で売りました。

プラスにするのは簡単で「安く買って、高く売る」をやるだけです。

立地とか方角とか駅徒歩とかブランドとかもあるでしょうが、ま、現実では「買った時期と売った時期で9割」決まるんじゃないかと。需給動向が市況を支配する考えですね。身もふたもないんですが、現実なので仕方ないです。

くわえて、個別株の世界で「バリュー株投資」とよばれるような、「将来性が高い」にもかかわらず、だれもが見過ごしていたり、何らかの理由で価格が割安な物件を狙うのもありです。当然、割安かどうか判断するための材料や指標が必要です。そのうえ、「見過ごされている」物件を狙うので、買うのは簡単でも売るのが大変だったりするのが要注意。

あとは、運、でしょうか。THE TOKYO TOWERSは会員限定期で倍率3倍の部屋に当選したし、こういった部屋は、中古でもやっぱり人気あります。需給のよい人気銘柄のIPO争奪戦みたいなもんで「需給よくて人気があるなら、バカになって買っとけ」ですな。ちなみに自分、品川シティタワーは超高倍率住戸に申し込んで補欠1位でした。当選しないと意味ないですが、運を引き寄せる力は必要そうですね。と、さらに身もふたも……。

THE TOKYO TOWERSは買えたひとはいつ売っても大きなプラスになっているでしょうから置いておくとして、真ん中の目黒駅界隈の新築マンションを例にとってみます。

4000万円で買って3か月以上放置して5000万円で売った。これを実現できたからくりはふたつ。「金利」と「富士山」です。

まず金利。これは青田売り物件で、契約時期の住宅ローン金利が約2.0%(フラット35)だったのが、引き渡しが終わり、そして放置している間に金利は1.5%を下回る水準になったことからの価格上昇です。「いまの家賃と比べてください」型の購入行動に照らすと、「住宅ローンは12万円までかなー」な方が検討する物件価格が4000万円から、4400万円になったということです。金利の変動だけで、です。

下のグラフは「住宅ローンの返済額は15万円と決めているひとが買える物件価格」の推移を、金利から導いたものです。これだけで、アベノミクスのからくりの一端がみえてきますな(フラット35の融資比率90%以下かつ期間35年で算出。金利と「買える価格」の関係に触れた記事が少ないので自分でつくりました)。 

そして富士山。金利のおかげだけで物件価格は4000万円が4400万円になったわけですが、ぜんぜん5000万円に届いてませんね。600万円はどこいったのかと。ま、項目のとおりで「富士山が見える代」が600万円なのですが、これは新築販売時に考慮されていなかったことが前提になります。

ここ、青田売りのとき、パンフレットでもなぜか富士山がみえることに触れられてなかったんです。自分が住む近くのマンション(当時)では富士山がみえるので、みえないはずがないんです。販売代理の会社は近隣の他社物件も多くてがけていて「慣れて」いたはずなんですが、一方で、低層ばかりをてがけていたので、高層は「富士山が売り」になることを見逃していたんでしょうか。価格表は、階層で価格が少しずつあがっていくだけの「富士山ぬき」の目に優しいものになってました。

では、「富士山が売り」になるとしてその価値はいくら? 東京から富士山が見える日数をちまっと計算して、景観価値に照らした資産価値を算出することもできるんでしょうが、これはロジックではないんです。「富士山すげー」というより、「世界遺産かつ日本一の富士山が、経済都市世界一の東京でリビングの窓の外に広がる。そんなプレミアムな眺めを日常にできる部屋を買える自分は世界レベルだろ?」という感情に対する価値ではないでしょうか!

それが600万円か。ちょっとしょぼいな。と、書いてて思いますが、「富士山みえます代(でも、もやがかかってることがほとんどです)」を月にプラス2万円と仮定すると、金利1.5%弱の期間35年で物件価格はプラス600万円くらいになるので、妥当な水準だったでしょう。

まとめ。

この件は、自分が「返済額12万円」で買った4000万円の物件が、金利が下がった時期に「この部屋は近隣相場だと返済額12万円だけど、富士山みえるから2万円足して14万円だな」で買ってくれる買い手が現れたので5000万円で売れた、と言い換えられます。

自分のような素人が「新築マンションを安く買って、高く売る」を実行するには、金利変動の助けが必要。青田売りの販売時期と引き渡し時期の差で儲けようというのは裁定取引の基本である「先物取引」と同じリスクがあるのは覚悟です。

バリュー株投資のような「部屋の価値のわりには販売価格が安いよね」という物件を探すのは、「自分はいまこの周辺に住んでいるし、住むときにほんきで相場調査した」という土地勘が必要でしょう。そして、自分が買った物件のすぐそばで新たに分譲が始まった物件の売りは「富士山眺望」で、その分をしっかり価格に上乗せしたように、その歪みは二度と使えません。