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ロボットとAI(人工知能)と共存する社会を前に、税金の壁

今年、2016年8月にまとめられた、厚生労働省の報告書「働き方の未来2035」では、遠くない将来、技術革新で実現された自由な働き方が企業組織を変える(破壊する)としています。「人が事業内容の変化に合わせて、柔軟に企業の内外を移動する形になっていく」からです。

技術革新によりロボットや人工知能が、いまは人間がやらざるをえない仕事を引き受けてくれるようになったら、企業組織も自然と変わるでしょう。くわえて、(IT業界では常識となっている)APIエコノミーに代表される「つくった仕組みを他社に開放し共有する」考え方は、企業の存在感をなくす方向に作用し、世界の在り方そのものを変革させる可能性があります。

「働き方の未来2035」では、橘玲氏がよく書かれている「クリエイティブクラス」のひとが集まった、根無し草「プロフェッショナル集団」がその中心になるイメージのようです。想像ではこれまでにないすばらしい働き方に思えます。

そして、本気で検討してみると、この国の数々の社会保障の制度や信用が「会社に勤めていること」を中心に運用されているため、一気に不安が襲ってきます。新しい働き方を手に入れるために、当然のことのように受けてきた多くのベネフィットをあきらめる覚悟が必要なのです。

税制の知識や損得勘定に長けた個人投資家も、多くが専業ではなく従来型のサラリーマンを続けています。サラリーマンを脱するのは「損」だからです。老後の収入不安を煽られてもワンルーム経営をしないのは、家賃収入は総合課税ゆえスケールさせるほど老後に「損」する可能性が高いからです(特に、同じ社会保障を受けるために必要な負担の観点で)。

会社に勤めていないと「政府も後押しする、サラリーマン向けの数十年の労働と命を担保にした超ハイレバレッジ投資」、つまりマンションや戸建てなど住宅の取得もできなくなります。住宅ローンが組みにくくなるあるいは、検討そのものを諦めることになります。IPO手前の企業の役員を勤めるご主人と、安月給ですがスタッフ職で一部上場企業に勤める妻の夫婦がいたら、安月給の妻にローンを組ませるのが銀行です。

金銭の損得で考えると、所得を生む事業などは起こさずに定年までサラリーマンを続け、定年退職後は事業をせず、分離課税で(先進国最低水準の)最高20%の源泉徴収で完結する株式の配当金やリートの分配金などを受け取る生活が一番なのかもしれません。

起業したばかりの企業へのさまざまな後付け優遇制度はありますが、そもそもの社会保障の在り方を変えていくことで、イノベーションが生まれ、だれもが新しい働き方を目指したくなる国に近づけそうです。いまは、「合法的だけどズルのような」手法で税金というコストを圧縮することになるので、「世界で自分しかできないことに取り組むイノベーター」の前に「膨大な数の節税スキームの実践者のひとり」になっていたりします。